高知から持続可能な交通を実現するを、連載してから約1ヶ月が経過した。最初は、5記事くらいのつもりであったが、なぜか23記事まで続くハメになってしまった。それでも、まだ途中で、「自転車の活用」、「高速道路問題」、「高知市中心市街地への自動車の流入規制」などがまだだ。しかも、「公共交通の再構築」に関しても書き残している内容はかなり残っている。いったい、いつまで続くやら書いている本人も分からなくなってしまった。おそらく30記事は超えるだろうが、言いたいことはすべて吐き出すつもりでいる。
今回は、今までの整理も兼ねて「なぜ、地方公共交通や自転車を最大活用して、クルマ依存社会から脱却を目指すのか」、その私が考えている目的を発表したい。ただ、あくまでも目標であり、それが必ずしも達成できるというものではなく、因果関係がはっきりしないものもあると思うが、その点は留意していただきたい。
[グローバルな環境問題への対応 CO2排出の大幅削減]
アル・ゴアの『不都合な真実』に代表されるように、地球温暖化を中心に地球環境問題は、深刻化している。特に、近年の気象災害は異常であるし、かなりの氷河が融けて後退しているという報告もある。CO2の大量排出が温暖化を本当に促進しているのか議論が分かれるところだろうが、だからと言って排出し放題では非常にまずい。あとから甚大な被害を受けてもあとの祭りであり、後悔しない対策が求められる。
程度問題ではあるが、現在のクルマ社会は、確実に環境を汚染している。京都議定書では、1990年比で、CO2排出を2012年までに8%削減することが目標になっているが、実質的に日本は達成できそうにない。それでも、高知県だけでもポリシーを持って挑戦していく価値はある。1990年より、CO2排出が大幅に増加した部門が家庭・民生部門と、運輸部門である。運輸部門の増加は、当然ながら自動車が増加したことによる。家庭・民生部門の増加もロードサイド店の増加などクルマ社会化と関連して増加した側面もあると思われる。クールビズやレジ袋の削減などと気休めにしかならないことは、きっぱりやめて本丸を攻めて実行すべきである。自動車の保有台数と走行距離を削減してこそ、大幅なCO2排出は実現できる。
[地域エネルギーの推進 エネルギー危機管理]
これは、原発からは真っ先におさらばして、さらに化石燃料の使用も削減していくことを目標にしている。現在の社会システムでは、それらに依存せざるを得ない(自然エネルギーのみで確保できない)が、その器自体をスリム化することによって、地域内でエネルギーを確保することが可能になる。家庭レベルでは、風力や太陽光で電力をできるだけ賄い、大規模に電力を必要とする場合は適宜水力発電を、補助的に火力発電をというふうにしていく。
その中で、最も削減すべきものが無駄な自動車利用だ。そればかりは、どうしても化石燃料に頼らざるを得ない。最近、バイオマス燃料が話題になっているようだが、あれは農地を拡大しようとして食糧生産を脅かし、森林伐採につながるとんでもないシロモノである。ただ、路線バスを動かす程度なら、バイオマス燃料も一つの選択肢に入るとは思う。いずれにせよ、個人個人が好き勝手にマイカーを乗り回している以上は、ローカルエネルギーでは対応不可能だ。不要不急の自動車利用は削減し、可能な限り公共交通や自転車に代替することが必要だ。鉄道路線の電化推進を提言しているのも、電気であれば地域でもエネルギーが産出できることによる。
そして、エネルギー危機管理。石油の採掘量が伸びない中、中国の需要が激増している。それで、中国は石油資源を優先的に獲得するために軍事技術を産油国に提供しているほどだ。ガソリン価格も上がっている。これがもっと高騰すれば、現在のクルマ社会は破綻せざるを得ない。そもそも我々の生活が、遠い中東の石油に依存しているのは、いかに脆弱なものであるか再認識しなければならない。まさに、防災と同様に地域社会の危機管理でもある。
[中心市街地活性化 古い街々の蘇生 脱ファスト風土]
特に90年代半ば以降は郊外に幹線道路が整備され、沿道にいわゆるロードサイドショップが林立ていった。その極めつけはイオンショッピングセンターの開業である。一方で、高知市の中心市街地は急激に空洞化が進んだ。西武とダイエーが撤退。映画館も3館すべてが閉鎖するなど、衰退著しい。しかも、大丸までも撤退が囁かれている。非常に有利な地の利を持っていた中心市街地が、ここ5年ほどで一気にさびしくなった。
「これも時代に流れだから仕方ない」では、済まされない。にぎやかな街は、その地域のアイデンティティであり、自動車を運転できない人にとっても、観光客などその地域の住民以外にも歩ける街の方がいい。そもそも、自動車を前提とした交通体系は、エネルギーと資源の無駄だし、郊外の商業施設は、外部の大資本がほとんどであり利益のかなりの部分を流出させてしまう。しかも、人工的で画一的な空間は、非常に無機質で寒々しい。まさに、ファストフード店に代表される画一的システムの都市空間「ファスト風土」の出現である。この傾向が強くなると外部から見ると高知の魅力は消えうせてしまう。やはり、お街が賑やかで活気のあることは必要なのである。
脱クルマ社会を進めていくならば、自ずと公共交通が重要視されるし、中心市街地に都市機能が再集積されることは当然だ。お街は公共交通と一体で機能するのである。高知から持続可能な交通を実現する(12)のように、駐車場整備で活性化はしない。公共交通を使いやすく便利にしてこそ中心市街地は甦る。これは、帯屋町や大橋通など高知市の中心市街地だけではない。後免町、野市、赤岡、夜須、安芸、伊野、佐川、須崎、中村などでも、少しはずれの幹線道路沿いに拡散した商業施設等を、昔からの市街地を再生し再集積させることも、この交通戦略の一つである。それらを有機的に結ぶのが「土佐電鉄とごめん・なはり線およびJR土讃線との直通運転」の提案だ。例えばごめん・なはり線だと高知の中心市街地と、主にごめん・なはり線の快速停車駅に発達している古い街々を一直線で乗り換え無しで相互に結ぶことができる。
[過疎対策 農山漁村の活性化 まちづくり]
高知県全体でも、人口減少が進んでいるが、山間部などの集落は、過疎化が進んできた。限界集落とよばれる消滅の危機にある集落も数多い。だが、これらの活性化は急務である。人がすまなくなったら山林や田畑を管理する人がいなくなり、荒廃してしまう。それは、国土を守れなくなることである。昔のようにはいかないが、何らかの形で人々がそこに暮らし生活を営むことは必要である。公共交通の活性化は、農山漁村の活性化に一役買うと思っている。現在の過疎地バスは、本数も少なく自動車が運転できないお年寄り専用になっているが、例えば1時間に1本を確実に確保し、運賃体系の共通化や環境定期の導入などによって、休日の行楽や所要などで誰もが利用できるようになれば、多少ダイヤに縛られるもののマイカー以上に便利である。高知市に一極集中してしまった人口を適度に再分散させるには、公共交通の充実は必須だと考える。もっとも、東京一極集中こそ改善し、高知にも人が戻ってくるようにすべきだと思うが・・・。
[地域内の雇用促進 地域経済の活性化]
高知から持続可能な交通を実現する(13)で書いたように、公共交通の活用は、地域での雇用を促進させる。それは、自動車関連の雇用が減少する以上の雇用促進効果がある。失業者が増え、低所得者も多い高知県にとっては魅力的なことであろう。
[高齢者対策 高齢者・障害者にも移動の自由を]
高知県は、日本で最も高齢化が進行した都道府県である。最近はそうでもなくなったが高齢者の免許保有率は低く、また、免許があっても身体能力の低下により自動車を運転することも大変になるし、なにしろ交通事故の危険性も高まる。高齢者特有の自動車事故も新聞で取り上げられすでに社会問題となっている。また、高齢を理由に免許を返上する人も増えてきた。
今、自動車の運転できない高齢者の方々が自動車を自由に利用できる人と比べると、まるで住む世界が違うようだ。家族などに乗せてもらわないと実質どこへも行くことができず、少ない年金では、バカ高い公共交通も頻繁に利用できない。もし、公共交通網が発達していて、それが安くて本数があれば、高齢者にとっても天国だが、現実はその逆である。現に路面電車だけは便利な交通機関であり、高齢者にすごく人気があるそうだ。
それにも関わらず、貧弱な公共交通しかない状況は、「交通権」というか「シビルミニマム」を満たしていない。そのためにも、現在の公共交通の閉塞状況から打破して、高齢者でも障害者でも子どもでも安心して利用できる公共交通整備は求められる。誰もが行きたい場所に自由に行けるのは、充実した公共交通網こそがコスト的にも実現する。
今、マイカーが便利だと思っている人々も、年とって困るのは自分だということを認識しなければいけない。また、マイカーを保有し使用することは、莫大な経済的負担の上で成り立っていることも再認識してもらいたいと思う。
[医療対策 健康の増進]
クルマに依存しきったライフスタイルは、運動する機会を著しく減少させ、肥満や高血圧の原因になる。糖尿病などの原因もなっている。公共交通と自転車利用が一般的になると、適度な程度には歩いたり自転車に乗ったりすることになる。特に、自転車は有酸素運動であり、健康に非常に良い。こうして、医療負担を個人、行政共に削減できるようになる。お年寄りだって、使いやすい公共交通で自由にあちこち行けるようになるから、今よりもっと生き生きと元気になるであろう。
[居住環境の向上 日本一住みやすい地域を目指せ]
過剰にクルマ依存した社会は、生活の質を落としている。路地という子どもの遊び場を奪ったし、大人にとっても憩いの空間を減らした。あちこちが駐車場になってアスファルトで塗り固められ、緑が減少したし、ヒートアイランド原因にもなっている。騒音や振動に恒常的に悩まされている場所も多い。コミュニティの破壊にもつながってている。新堀川の問題こそ自動車と道路によるアメニティ空間の破壊だ。
自動車を適正なレベルまで減らせば、きっと高知はもっと住みやすくなるし魅力的になるはずだ。子どもだってもっとのびのびと過ごすことができるだろう。日本に先駆けた脱クルマ先進県になって、日本一住みやすいという評価が得られるようにしていこう。多くの人を高知に呼び込もうではないか。そうすれば、過疎対策にもなるし観光活性化にもつながる。大企業の本社が環境のよさを狙って移転するかもしれないし、さまざまな国際会議の場所として高知が選ばれる日も来るかもしれない。
[観光の活性化 観光客の足を確保]
自動車を使う観光は、増えれば増えるほど問題を起こす。渋滞や慢性的な駐車場不足は発生するし、地域の道路事情に疎いだけにトラブルや交通事故の原因になる。また、観光客の自動車自体が、観光地としての価値を下げてしまう。溢れかえるほど「二度と来るか!」という気持ちになるだろし、自動車関連の施設が地域の景観を大いに阻害してしまう。そもそも外国人の観光客には、自動車(レンタカー)は対応できない。
一方で、公共交通機関が充実していれば、観光客でも安心して移動できる。安価な高知県全域1日乗車券等を使って高知県の各地を自由に移動できるようになれば、様々な地域の魅力再発見、活性化につながるであろう。それらを相互に結ぶ公共交通のネットワークを実現させる。だからこそ、土佐電鉄とごめん・なはり線およびJR土讃線との直通運転による基幹交通の充実や空の玄関口である高知龍馬空港への鉄道乗り入れを提言しているわけだ。
[高知を世界へ発信 世界的に有名な高知に!]
環境問題への対応も、日本の小さい一地域で必死になって省エネルギーを推進しCO2排出を減らしても、地球全体で見ればほとんど全く意味のないレベルしかないだろう。莫大な人口を抱える中国やインドが経済成長にともなってエネルギー消費量が増大している前では、高知県での努力など物理的にはほとんど非力であろう。
しかし、全く無意味ではない。むしろ、高知県の取組みが日本全国に、世界中に知られることにより、他地域でもその地域の事情に応じて応用されることが極めて重要だ。「CO2排出を激減させた高知市」、「日本で最も環境保全に対応した政策を実行している高知県」、「根本的にクルマ依存社会から脱出を図った高知都市圏」と、国際的な評価を受ければ、世界で高知県を見る目は変わるだろう。国際的な交流がひろがるのは高知県にとっても大きな財産になるはずだ。
[世界中を魅せる高知県へ]
前項と絡むが、ビジョンを明確にした環境政策・都市計画をリーダーシップを発揮して実行して魅力的な高知県を創造していこう。高知県自体が魅力的になり、世界中の人々を魅せるようになれば、高知県は有名になる。それは、世界から訪れる人々が増えるということで持続的に観光立県を実現できる。こうして高知県をもっと活性化していこう。もっと、高知県固有の文化や歴史、街並み、自然などを大切にしていこうではないか!そこに、核のごみが流入することもやめさせようではないか!
個人的には、高知市は、アメリカで言えばカリフォルニア州サンフランシスコやオレゴン州ポートランドのように魅力的になってもらいたいと思っている。どちらも、クルマ社会のアメリカの中では公共交通がしっかり活用されている都市である。実はポートランドは、様々な点で高知市と共通している点が多い。高知市だって世界中から人々が訪れる魅力的な都市になれる可能性を潜在的に秘めているのだ。そういう日が、いつか来るように高知県政、高知市政を実行していただきたいと思う。
〔高知から持続可能な交通を実現する一覧〕