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高知から持続可能な交通を実現する(73) 「高知市近郊の公共交通ネットワーク再編案(中)」

 高知から持続可能な交通を実現する(72)の続きで、具体的な高知市近郊の公共交通ネットワーク再編案について述べる。

 どうやったら、現状の運行範囲をカバーしつつ、シンプルで分かりやすい路線ネットワークにできるのかを、土電、県交の時刻表を解読しながら考えてみた。知らない地名も多く、一つ一つの系統を理解するには結構難儀したものだ。

 再編案を考える上で、留意したのは以下の通り。

・一目で分かる路線図が描けるようにネットワーク化
・鉄道、路面電車を基幹交通として位置付け、路線バスとの役割分担の明確化
・土電、県交の垣根を取り払い包括的に再編成
・路面電車とバス路線の重複はなるべく避ける
・多系統少便から少系統多便へ
・統合可能な部分は統合して複数の路線を一体化
・郊外部と中心街の乗換え回数は原則1回までになるように配慮
・御座、土佐道路など現状で不便な部分の解消

 そういうことで、東は野市・土佐山田、西は伊野・宇佐方面に至るまでの高知市近郊で、公共交通ネットワーク再編案の路線図を作成してみた。以下の図がそれである。細かいところで実態とかけはなれている部分があるかもしれないが、あくまでの一つの提案であるので、その点はご了承いただきたい。

[高知市近郊公共交通ネットワーク再編案]
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(拡大版はこちら 3000×2467 ※容量1.8M注意

 鉄道・路面電車と路線バスの役割分担を明確にし、複数の系統を利便性を考慮しつつまとめて系統数を絞った。こうすると、あくまでもこの提案の中での話であるが、高知市中心街(高知駅、はりまや橋、県庁、枡形近辺)に直接乗り入れるバス系統は実に5系統まで減らすことができる。

 そうすると、それぞれにラインカラーを設定することも可能になる。それぞれの系統ラインの中で、発着地はもちろん複数あるものの、そのライン上を忠実に運行すれば利用者も安心して利用できる。一目で分かる路線図が提供されることにより、積極的に「乗ること」を意識することができるようになる。

 それぞれの系統案について述べていこう。主に市内線系統について取り上げる。単なるフィーダー化による運転区間短縮ではなく、複数の路線を統合するような形での路線再編成が主なので、あるので字数を割いて説明する。

 まず最初に、紫ラインの「一宮・領石線および高岡線」。これは、現在の高知県交通のメイン路線の一つである系統を受け継いだものである。どちらもラインカラーは同じであるものの一つの名前をつけるのが難しい(敢えて言うと「高知県交通本線」か)ので2つの名前に分けた。運行経路は、現行をほぼ継承するが、奈路以外で分岐するのをやめ土佐道路経由に一本化し、田井~大杉駅~(奈路)~領石~医大~一宮~比島~高知駅~はりまや橋~上町五~石立十字路~下針木~高岡~須崎~杉の川~梼原を結ぶものとする。この系統は、沿線人口が比較的多いのに関わらず鉄道空白地帯を通りフィーダー化も困難な路線形態であるので、直に高知市中心街へ乗り入れ、高知駅~はりまや橋~上町五丁目で路面電車と併走する。長大系統ではあるが、もちろん区間を区切って運行する。(場合によっては、田井~梼原を通し運行とかあるかもしれんが…。念のため言っておくが運転手は途中で当然交代。)

 次に、薄緑ラインの「桂浜線」および薄茶色ラインの「宇佐・横浜線」。「桂浜線」は、現行のはりまや橋以南の運行体系に近いが、運行系統シンプル化のため高知駅発着とする。(さすがに桟橋通五丁目で路面電車乗換えなんていうムチャは言わない) 「宇佐・横浜線」も横浜で「桂浜線」にフィーダーなどと言ったらあまりにも酷なので、そのまま桂浜線に乗り入れて高知駅発着とする。この路線は、現行の市内~横浜~蒔絵台~南ニュータウン~長谷~新川通~中島~高岡を結ぶ路線を継承したものであるが、高岡発着を宇佐発着にしたのが大きな変更点である。

 上の「桂浜線」と関連するが焦げ茶色ラインの「浦ノ内線」について説明する。再編案では、長浜出張所より南下し旧春野町の海岸線を通り宇佐方面へ至る路線であるが、これは現在の市内~長浜~東戸原~仁野~宇佐の系統を引き継ぐものだ。ただ、浦ノ内線と称したのは、現在、高知高陵交通が運行している宇佐~深浦~須崎~久礼~上ノ加江~矢井賀の系統とも統合することも考えてである。この路線は、需要の観点から小型車で運行することになろうから、長浜出張所発着で桂浜線に連絡するものとする。

 黄色ラインの「十市・春野線」。土佐電鉄(正確には土佐電ドリームサービス)の「十市・後免線」、「医療センター線」、「高知医大線」、高知県交通の「土佐塾校線」、「南ニュータウン・平和団地線」の一部をそれぞれ抽出してつなぎ合わせて統合した路線である。そのため、くねくねしながら後免町から南下しまた北上して市内を経由で春野まで至る形態になってしまった。末端では、春野の各集落を律儀に結んで仁野に至る。これは、県交北部交通の「仁野線」の一部を継承した。市内では、電車通りでなく北側の大津バイパスを経由しているのは、卸団地、北金田、小津町など現在では上手くカバーできていない部分をカバーするためである。この系統は、長距離利用でなく、他の路線との乗換え利用を主眼において設定している。県立美術館通~医療センター・パークタウン、高知駅~北金田・卸団地、上町二丁目、南ニュータウン~上町二丁目などの利用が主になるだろう。なお、土佐塾校系統もこの路線に含むが、この系統は当然ながら朝夕のみの運行で、高知駅発着が主になるはずだ。

 紺色ラインの「奥福井・北泰泉寺線」。土電の「奥福井線(宝町経由)」そのままと「岩目地・北泰泉寺線」のはりまや橋以北部分と県交北部交通の旧土佐山村方面(小坂峠、久礼野、菖蒲、高川)へ至る便を統合して1本化した路線である。また、現在のイオン線の役割も担い帯屋町バス停からイオンモールのバス乗り場までを乗り換えなしで結ぶ。

 濃い緑色ラインの「みづき線」。ネーミングがめんどくさくて安直につけたが、県交通の「孕橋~吉野線」と「観月坂線」、土電の「宇津野線」、県交北部交通の「円行寺線」、「仁野線」の一部ずつを統合して1本化した。孕橋~深谷~大橋通~愛宕町~西泰泉寺~宇津野~観月坂~円行寺~上町二丁目~河ノ瀬~吉野と市内各所を縫い、春野町役場までいたる。この路線の役割は、六泉寺、高見町、神田などの幹線系統から離れている不便な地域、北部の住宅地である加賀野井や観月坂と中心部を結び各所で他線と連絡する。高知市街地北部からから中心街、上町二丁目どちらへもアクセスしやすいようになる。円行寺へ行くのは支線で、孕橋から30分間隔で運行するものとする。

 高知市街地西端をかすめる、水色ラインの「鏡川線」。高知県交通の船岡団地発着便と蛍橋経由鳥越線、県交北部交通の旧鏡川方面(行川、川口、畑川、柿の又、狩山、程の窪、平石、菖蒲)を結ぶ路線とを統合した系統で、鏡川橋で「土佐電鉄伊野線」を始め、「高知環状線」(後述)、「高岡線」とも連絡する。

 青色ラインの「天王ニュータウン線」。これは完全にフィーダー化し、高知大学前で土佐電鉄の路面電車と連絡するものとする。西側では、八田~高岡~波介経由~市野々と運行する。

 今度は逆に高知市街地東側について。まず、黄緑ラインの「トーメン団地・前浜線」。高知県交通の「トーメン団地線(薊野バイパス経由)」と土佐電鉄の「前浜線」をくっつけた。知寄町二丁目で路面電車と接続する。ネットワークとしての利便性を向上させるには、このように基幹交通と垂直に交差する系統も充実していなければならない。なお、南国市の発着地は「高知空港」に変更した。これも、他路線(航空便だけでなく)との結節を考慮してである。

 その東隣の薄い紺色ラインの「蒲原・種崎線」。北部では、高知県交通の「かもはら線」と県交北部交通「医大病院~鏡岩線」の一部分を、南部では、土佐電鉄の「種崎線」と「十津団地線」の一部分を統合して組成した。土佐一宮でJR土讃線と、知寄町三丁目で路面電車と接続し、近年商業進出著しい卸団地への公共交通アクセスを改善することも目的とする。また、医大病院と桂浜が発着地であるのは、これも他路線と連絡を重視するためだ。

 ピンクラインの「潮見台線」。これは、他につなぐ路線もないので美術館通と潮見台のピストン運行とするのが望ましい。

 土佐電鉄の「安芸線」「神母木線」「岩目地線」と県交北部交通のいの町北部へ至る「柳の瀬、柳野、若宮、長沢方面」のバス路線は、市内まで走らすと路面電車と完全に重複になるので後免町、伊野で連絡するものとしよう。

 あと超重要なのが、完全な新設路線である赤色ラインの「高知環状線」だ。一部の区間では、土佐電鉄の「イオン線」や「万々線」、高知県交通の「中万々経由の鳥越線」を引き継ぐが、実質新路線と言ってもいい。この路線は、路面電車や中心部から放射状に広がるバス路線とを各所で結節し相互に連絡することを主要な役割とする。この路線があるかないかで全体の利便性は雲泥の差だ。道路の整備が進んだことを逆手にとった路線設定とも言える。だからと言って新堀川にフタをして4車線道路建設を肯定するわけでないが。どう考えてもあそこに通せるバス路線などないし…。この路線に関しては、「よさこいグルリンバス」のように、すぐにそれと分かる専用塗装のバスを用意して運行したいくらいだ。真っ赤なボディにしたら強烈なアピールになる。他線との連絡が主要な使命なので高頻度運行が求められる。

  鉄道路線は、「空港線」以外は現行通りに書いた。高知から持続可能な交通を実現する(25)で述べたように、今後高知県が観光に力を入れていくならば、絶対につくるべき路線であるので、敢えて書き込んだ。それまでは、現行の「空港連絡バス」の運行になるが、生活交通としても活用できるようにクローズドドアをやめて介良以東での途中区間からも乗降可能にしたいところだ。

 一連の路線再編案についての、具体的なメリットを列挙する。

 まず、なんといっても高知市近郊の公共交通ネットワークが明確になることだ。それにより、目的地へ行くにはどのような路線に乗ったらよいのかが一発で分かるようになる。鉄道と違って路線の存在が目立たないバス路線も地図上で視覚化することによって、より積極的に乗ることを意識できる。この路線図であれば、慣れたら手元で路線図を見なくても大丈夫だろう。

 それに関連して、現在は存在感の薄いバス停であるがその存在感も向上できる。中心街の電車通りのバス停では、多数のバスが発着しているが、それらのバスがどこからやってきてどこへ向かうバスが発着しているのか、さっぱりと言っていいくらい分からない。路線図の不備もそうだが、高知のバスに乗るには「専門的知識」が必要で、「熟練者」でないと使いこなせない。それでは、観光客はおろか住民すらまともに使えない。

 再編成で、なんとかそれを打開できるのではないかと思う。各バス停に発着する系統が整理されるので、各バス停で「○○線□□方面と△△線××方面へ向かう便が発着」などということがはっきり明示可能だ。系統ごとにサインを工夫すればより分かりやすく、さらに路線網が認知されやすくなる。分かりやすい例では、下の写真のように地下鉄駅の入り口に路線名が必ず書かれている。

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(東京メトロ市ヶ谷駅 有楽町線と南北線が通る)

 主要なバス停は、当然ながらただポールがあって時刻表がちょこんと貼ってあるだけというのは論外だ。屋根付きでベンチを用意するのは当たり前で、分かりやすい時刻表のほか、系統別の路線図とネットワーク路線図を揃え、周辺施設の案内や周辺地図も用意されているとなおよい。

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(系統別路線図の一例 東京メトロ千代田線表参道駅にて)

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(駅構内や周辺施設の案内も充実している)

 バス車両の方だが、系統ごとに専用の塗装で運行するのは理想ではあるが、運用上非効率であるし不都合も出るだろうからさすがに無理(「高知環状線」だけは専用塗装を採用してもらいたい)だけど、前面や側面に下地を路線カラーにした路線名を書いたサボを掲出てすぐに分かるようにしたらよい。さらに、行き先表示もLEDが普及したのだから、路線名と行き先を交互表示できるようにすべきだ。車内にもネットワーク路線図の掲出が求められる。

 そして、重複の無駄がなくなるので、それぞれの路線で「頻発・等間隔運行」が可能になる。複数の路線を組み合わせて使うことが前提なので、頻発運行は超重要だ。某BBSの投稿にもあったけど、都会の地下鉄が普及したのは、頻発運行で時刻表いらず、待つ必要がなく行けばすぐに電車が来る、しかも時間通りに来てくれるということが最大の要因だ。

 だが、高知では市内のバス系統であっても運行間隔が30分~1時間、またはそれ以上である。長浜方面、一宮方面など一部では本数が多い路線もあるが、運行間隔にムラがあり、3分しか空いていないこともあれば、20分空いていたりする場合もある。それでは当然使い勝手は悪い。

 高知市で、路線網が明確であり時刻表なしでも乗れる交通手段は土佐電鉄の路面電車のみである。電停に行けばすぐに電車がやって来る。これは大変素晴らしいことだ。伊野線の末端は20分程度間隔が空くが、それでも等間隔なので利用しやすい。これがせめてもの救いか。

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(土電の路面電車 高知市内で唯一時刻を気にせず気軽に利用できる)

 現在の乗務員数と車両数でネットワーク再編成して、どこまで各路線のダイヤを充実できるかは未知数だが、市内系統(郊外系統の市内部分も含む)は、最低でも10分に1本(場合によっては5分・6分・7.5分に1本)は必要だ。複数の路線を乗り換えて利用できるようになるには、頻発運行でないとほとんど用事にならない。そうなると結局は、自動車等からの転移は促せずに、コストだけ増大して散々な結果になるのは目に見えている。最初から強気姿勢で頻発運行すべきだ。行政の強力な後押しは必要不可欠だけど。

 例えば、再編案の「十市・春野線」では、中心市街地や高知駅を経由するので、南ニュータウン~医療センター(または美術館通)との発着は6分に1本、春野役場~パークタウンとの発着では、12分・18分間隔の1時間4本、末端の仁野や後免町発着は30分に1本ということになろう。最初は、人員や車両数が不足するので、理想的な本数とまでは行かないかもしれないが、無理のない範囲で実行してもらいたいものである。

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(運行パターンの一例)

 また、事業者側にとってもダイヤ編成が簡単になるメリットもある。系統が複雑に入り乱れることがないので、それぞれの路線で等間隔の整然としたダイヤ編成が簡単に実現できる。今の高知県交通のダイヤを見ると、まさに神業的運用……。

 某BBSの連中は、フィーダー輸送について述べるとすぐに「乗客の多くを占める高齢者が乗換え大変なことが分からんのか」とご丁寧にも叩くが、現状の路線網が複雑怪奇かつ本数も中途半端で分かりやすい路線図も存在しないことが、結果として信頼を失い多くの人からそっぽを向かれていることを認識していただきたい。

 この再編案は、郊外部と高知市中心街を結ぶ上で、乗換え回数がなるべく1回を超えないように配慮したし、合理化のための消極的なものではなく、末端部でも本数を確保するための積極的な提案である。もし仮に多い本数のままで中心街まですべて直通させたならば、運行経費は増大し、道路は各方面からのバスだけで混雑するし、平行する路面電車もその輸送能力を持て余してしまう。

 乗換えは確かにしんどいかもしれない。しかし、東京のように、地下鉄やJR線、私鉄線との乗換えで、ホームを移動するために階段を上ってまた降りたり、大手町や東京駅京葉線ホームみたいに延々と連絡通路を歩かされたり、大江戸線などのように地下深くまで行かなければいけないということは一切ない。JR線やごめん・なはり線のホームへの階段もたかが知れているし、路面電車とバスであれば、完全に平面移動で、乗換え距離自体も短い。

 例えば、県立美術館通で、潮見台方面・医療センター方面のバスに乗り換える場合、乗換えは完全に平面移動でその距離はわずか数メートルだ。車両のバリアフリー化を進めれば、ほとんど乗換えの抵抗はないと言ってもいいだろう。潮見台まではりまや橋から1本だけど30分に1本のダイヤと、県立美術館通で簡単な乗換えはあるものの10分に1本のダイヤ、どちらが便利であるかは明白だ。

 でも、これを実行するには、土電と県交の統合という最大の壁を乗り越える必要があるし、自治体の大幅な関与は必須である。運賃体系も抜本的に見直さなければならない。医療センター線のように、これまでのフィーダー化も上手くいっていないが、その点も交えながら次回に詳しく取り上げる。

〔高知から持続可能な交通を実現する一覧〕

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