高知から持続可能な交通を実現する(69) 「マイカーの維持コストは年間50万円以上」
某BBSの投稿でも指摘もされたことだが「マイカーよりも不便な公共交通にどうやって転移させるのか。大幅なメリットをどう提示できるのか。」という課題。ご指摘の通り避けて通れない問題である。
前回のエントリ高知から持続可能な交通を実現する(68)で、高知市都市圏では公共交通機関のグレードアップと自転車の活用、カーシェアリングの併用によりマイカーを持たなくても十分快適に生活できる可能性を示唆した。提示すべき大幅なメリットは、やはり莫大な維持コストのかかるマイカー保有を無理にしなくてもよくなる可能性があるということではないかと考えられる。
マイカー保有はとにかくカネがかかるのが現実だ。内訳を細かく考えてみる。
■所有にかかる費用
・車両購入費(自動車取得税、消費税、ローンの場合利子も必要)
・保険(自賠責+任意)
・車検代(重量税込み)
・自動車税または軽自動車税(地方税)
・免許更新費用
・JAF年会費■使用によりかかる費用
・燃料代(ガソリン税+地方道路税、または軽油引取税) 遂にリッター180円台
・メンテナンス代(タイヤ交換、オイル交換など)■その他(利用環境によって大きく異なる部分)
・反則金(捕まるやつが間抜けだが)
・駐車場代(月極、一時利用)
・高速代、有料道路代
・ワックスなど洗車関連
・後付けオプション費
・代行費
このように色々とかかってくるわけだが、最低限でもどのくらいかかるのか。まず、新車で普通車を買ったとして150万円、10年使用とする。車検は2年で10万円、保険は自賠責、任意含めて年間10万円、自動車税は年間4万円、走行距離は年間1万5000kmとして1km=12円の燃料代とすると年間で18万円。合計では、年間52万円。オイル交換代や高速代、駐車場代などを含まない最低限の費用ですでに50万円を超えているのが現実である。もし、1mたりとも乗らなかったとしても保有するだけで34万円かかる。
また、軽自動車であっても決して安上がりではない。軽自動車の年間コスト計算内訳というページがあるが、その内訳を以下に転載する。
<軽自動車の年間コスト>
総額約60万円(563,870円)
■購入費用 年間当たりの負担額 約18万円 (177,670円)
●自動車購入価格 1,109,850円(付属品・消費税込み)
●登録諸費用 133,842円(リサイクル関連費用込み)※7年で乗り換え、下取り価格ゼロとして計算。
(1,109,850円+133,842円)÷7年間
■維持費用 年間当たり約39万円 (386,200円)●1年間当りの走行距離 5,000km
●ガソリン代 5,000km÷15km/ℓ×燃費単価@135円/ℓ=45,000円
●月極駐車場代 10,000円/月×12ヶ月=120,000円
●任意保険料 32,000円
●自賠責保険料 35,340円/3年=12,000円
●自動車税 7,200円
●車検整備代 100,000円/2年=50,000円
●タイヤ代 6,000円/本×4本÷4年=6,000円
●オイル交換 2,000円
●外出先駐車場代 500円/1回×月5回×12ヶ月=30,000円
●有料道路通行料 3,000円/月×12ヶ月=36,000円
●洗車代 1,000円/月×12ヶ月=12,000円
●JAF年会費 4,000円
●その他修理・整備代30,000円
この場合は、色んなものを含めているのでここまではかからないだろうが、年間45万円程度は最低でもかかると考えてよさそうだ。確かに、税金や保険、燃料費、車検代は普通車よりも安くつくが、フィットやパッソ、コルトあたりのコンパクトカークラスと比較するとそれほど大差ないと思われる。決して、軽であってもそれほど安上がりではない。
マイカーを保有するということは概ね年間50~80万円程度はかかると考えた方がいいようである。確かに自動車は、ドアツードアでいつでも好きな時に走らせられるし、雨風凌げるし自分の体力を使う必要もない。しかし、それはこの莫大なコストの上で成り立ってるのである。それに見合う使い方を多くの人はしているのだろうか?とも一方で思う。通勤や、買い物などにちょこちょま使うだけでは極めてコストパフォーマンスが悪いだろう。自動車の真価が発揮されるのは、むしろ物の運搬ではないだろうか。その場合はリヤカーや馬車で運ぶのに比べて、確実に時間短縮になり積載能力も上なので仕事の能率を上げられるからである。貨物車や作業車(クレーン車やシロアリ退治車など設備を必要な場所まで運んで来る車)、緊急車両こそが適切な自動車利用ではないか。
一方で、自転車(クロスバイクやハードテイルMTBを想定)はある程度いいものを買っても10~15万円(いつも乗るならそれくらいは出して快適で幸せに感じられるものに乗った方がいい。それ以上は趣味の領域で実用上はそこまで必要でない。)。そのくらいの自転車であれば、かなりの部分でマイカーの代替になる。もともと価格も自動車の10分の1以下で、燃料代もかからないし、税金を徴収されるわけではない。保険代も安い。この時点ですばらしく経済的である。丁寧に乗れば、トラブルはほとんどないし、修理や部品交換も極めて安い。自転車の販売価格こそ幅はあるが、その後のメンテナンスについては、費用は基本的に同じか、むしろ品質が高い方が故障が少ないため安くつく場合が多い。オーバーホールは3万円台で可能であるが、考えようによっては激安だ。自動車は、10万円台の車検でもごく一部しかメンテナンスできない(本気でエンジンまで整備すれば100万円はくだらないとある整備工から聞いた)が、自転車は3万円ですべてがリフレッシュ可能である。それも競技前提でなければ5年に1回くらいで十分で、大切に乗れば30年は使える。やはり極めて経済的な乗り物である。年間に保険代が5000円、修理代が5000円とすれば、本体費用も含めて年間2万円程度。それでいて、そこそこ遠くへも楽に行けるし、キャリアを適宜装備すればある程度の荷物を運ぶことも可能である。究極のコストパフォーマンスを誇ると言ってもいい。
それにしても、某BBSの投稿者が指摘するように、公共交通利用はそんなに不便なものだろうか?列車の場合は時間が正確なので予定が立てやすいし、乗ってしまえば自分が運転する必要なく正確に運んでくれるのも大きなメリットである。そのため、本を読むなどして移動時間を有効に使える。眠ければ寝ればいい。そして、マイカーに比べはるかに安全性は高い。マイカーを自分で運転するには責任が生じるがそれもないので煩わしいことが減る。多くの人が積極利用すれば一人当たりのコストは極めて安くなることも重要な点だ。利用者として賢く使うコツを掴んだら結構快適に利用できるものであると思う。現実にクルマ社会のアメリカでも便利で快適な公共交通を用意すれば利用されている事実は大きい。
ガソリン価格も大幅に上がり、食品や日用品も高騰する中で、自動車の諸費用は固定費となって生活を圧迫する要因になっている。自動車税や保険代など支払いの時に「また支払いか…、カネないのに…。」と、よほどの金持ちでない限りそう感じるだろう。クルマ好きの方でさえかなり負担に感じるに違いない。このように、維持費に汲々としているのが現実だ。
他にも、上下水道代、電気代、ガス代、電話代や固定資産税または家賃という固定費を払っているわけで、それらの支払いが常について回るわけである。固定費に追われる人が多い社会は、いくらGDPが高かろうが豊かな社会とは言えない。
(原油価格の高騰のあおりを受けて…)
そう考えると、一家に2台も3台もあるのは、むしろ貧しい生活ではないか。もし自動車を保有しなければ、もっと別の文化的なことにカネを回せるからだ。インテリアを質の高いもににする(私はインテリアデザインに興味があるので、よくインテリアショップを見てまわる)とか、芸術や映画を楽しむとか、旅行に行くとかもっと自由に使えるようになる。現にマイカーで行くのは、結局ディスカウントショップやファストフード店ばかりという人も多いのが現実だ。日本は全体的に住環境がまだまだ良いとはいえない。自動車に吸い取られている富をその向上に回すことは重要課題ではないだろうかと思う。
公共交通利用の大幅なメリットは、マイカーを無理に持たなくても快適に安価に移動できる社会を実現できることが最も大きいが、これはマイカーを持たないことが前提である。マイカーをすでに持っている前提なら、いくらガソリン代が上がったといっても移動費用自体はマイカーの方が安い(有料駐車場を利用するなら有利になる場合もある)ので経済的には不利になってしまう。大いにメリットがあるのは事故ったり捕まった時のリスクが甚大な飲酒時くらいである。
現状の公共交通の水準では、自動車を手放すには不安が大きい。大変勇気がいる。「それで本当に大丈夫なのだろうか?」と心配なので、維持費が高くても保有し続けざるを得ない。公共交通の利便性向上には、自動車の保有を積極的に手放せる環境も同時につくっていかなければいけない。
現状のインフラ水準や人員であってもソフト面を工夫すれば、かなり利便性を改善できるのでそれを期待したいところであるし、「マイカーの維持費が高すぎるので公共交通の利便性を向上させてほしい。」という要望が市民側からももっと出るようになれば御の字なんだが…。とりあえずは高知から持続可能な交通を実現する(60)で書いた『高知県公共交通総合ガイドブック』の作成配布は大きなきっかけになるし、経済的なメリットを伝えるのが最も有効だと考えている。「公共交通と自転車を上手く活用すれば、高知でも自動車に乗る必要はほとんどありません。必要な時はカーシェアリングを適宜ご利用ください。」と、堂々と宣伝できるレベルに到達すべきだ。
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