高知から持続可能な交通を実現する(11) 「トランジットモール導入案(後免町・朝倉)」
公共交通活性化とまちづくりを絡めた手法としてトランジットモールと呼ばれるものがある。これは、モール(歩行者専用道路)の一種であるものの、公共交通機関(トラム、バスなど)の通行もできるようになっているのが特徴だ。LRT関連の事例でよく紹介されるのは、かつては自動車で溢れていて通行人も少なく商店街が寂れていたのを、一般の自動車を通行禁止にして、公共交通と歩行者の空間につくりかえると見事に街は甦ったという話である。単にそれだではなく、花壇や彫刻、モニュメント、パーゴラなどを置いたり、ベンチを設置したりして、歩いて楽しい空間を演出している。ストラスブールのようにトラムそのものがデザインとなっているのも都市の魅力を向上させている。公共交通の整備がまちづくりと一体的になっているのが特徴だ。これは、歩行者重視、つまり人に優しいまちづくりを推進する上で大変役立つツールとなっており、世界的に普及しつつある。
一般に以下のようなメリットがあると言われている。(まちづくり関連用語集より)
・歩行者が安全で快適に繁華街を歩くことができる。
・車線数が減るため、通りの横断がしやすくなる。
・休憩や待ち合わせをする場所が広くなる。
・イベントなどの開催や、祭りなどの活動が可能。
・バス等の通行がスムーズになる。
言葉より写真の方が、トランジットモールとは何かを鮮明に伝えていると思うので、写真を掲載する。いずれも国土交通省HPから転載させていただいた。
(フランス・ストラスブール)
(ドイツ・フライブルク)
私の提案は、単に公共交通の利用促進と利便性向上のみを目的としているのではなく、広く脱クルマ社会や省エネルギー社会を実現させるために、郊外のロードサイド沿いに散らばった商業施設等をもう一度、旧市街地に集結させることも目標としている。今のままでは、自動車が通過するだけで安心して歩くこともままならない。特に子どもやお年寄りや障害者にとっては。これでは商店街の蘇生はまずできない、まずは自動車におびえることなく歩けるようにしなければならない。早急に改善が求められる。
さて、高知ではそんなものどこに入れるのだろうかと疑問に思われるかもしれない。高知市中心街の電車通りから自動車を完全排除することは考えられない(流入規制や車線減少は考慮する)し、歩道はちゃんとあるのでそんな必要はない。しかし、旧市街地で古い街区構造を持っている2箇所が候補に上がる。南国市の後免町と高知市朝倉の旧道である。その2箇所は以下のような特徴を持っている。
・再開発などされず、古くからの街区構造を残している。
・古くからの商店街であるが、寂れて活気がない。
・歴史的な建造物が残っている。
・路面電車の軌道が通っており、道路との併用軌道である。
・道幅が狭く、歩道もない。安心して歩くことができない。
この2箇所の現在は、自動車が通り抜けるだけの空間になっている。特に朝倉の旧道は、電車が来ると1車線が塞がるので、運転にも相当神経を使う。どちらも空き店舗が増えいまいち活気がないくなっている。それらを再生するためにも、とりあえずは、この2箇所で社会実験からでも始めてみてはいかかだろうか?
《後免町(後免東町~後免西町、JR後免駅一帯)》
南国市後免町は、藩政初期より続く、350年以上の歴史を持った街である。野中兼山の時代に、租税や諸役を免除したため「御免町」となり、それが「後免町」になったという。路面電車は、明治44年(1911)に後免町まで伸びてきた。省線(後の国鉄→JR)も大正後期に開通し、鉄道とともに後免町は発展した。おそらく昭和50年くらいまでは、繁栄した時代であったのであろう。
しかし、クルマ社会が到来、バイパスが開通し商業施設が郊外移転するとともに、商店街は寂れていった。電車通りから北に入ったところの商店街も、昭和の雰囲気を色濃く残しているが、シャッターが閉まった店が多く活気が全然ない。全国の地方都市で共通にかかえる中心市街地の衰退問題である。
といっても、大型スーパー1店舗(カルディア)、中型スーパー1店舗(ナンコクスーパー)、小型スーパーが後免中町電停前に1店舗(中町スーパー)、とスーパーだけで3店舗もあり、銀行、郵便局、市役所、その他医院も多くあり(JA病院が東道路に移転したのは残念・・・)都市としての体裁は一応保っている。街区構造も昔のままで、路地裏など人間味のある空間が数多く残っている。 まだ、蘇生できる可能性は十分ある。欧米の事例だってトランジットモール導入前は、今の後免町のような状態だったかもしれない。
後免町 南国市 (後免町のまちづくりを紹介)
ここを、後免東町と後免西町の間の電車軌道沿いやJR後免駅の部分、つまり三点を結ぶ三角形のエリアから自動車を原則締め出し、モール化することによって再生への道が見出せると思うのだ。トランジットモール化に加えて、舗装の整備、電線地中化や修景整備、伝統的な建造物の保存・再生など総合的なまちづくりを実施してもらいたい。ここが本来の街の姿を取り戻し、バイパス沿いは、田園地帯に徐々に戻していくというコンパクトシティを実現させるために。それは、高知市の中心市街地や後免町だけでなく、公共交通の最大活用で、赤岡も安芸も伊野も須崎なども古くから続いた街を蘇生させよう。同時に脱ロードサイドショップ文明を促進させよう。ただし、決してスーパーやコンビニ、ファミレスなどの商業形態を全否定しているわけではない。むしろ自動車以外でのアクセスが不便なのが問題だ。そういう店舗も少数、古い商店街に混じることは問題ないと考えている。
(後免中町付近の電車通り 人々が集い楽しめる空間に変身できるか?)
(後免町商店街。昼間なのにシャッターが閉まって寂しい雰囲気)
(伝統的な様式の商家だって残る)
(住民の憩いの場である路地だって健在)
通過交通の問題が出てくると思うが、山田方面からは、後免駅の北側を通る2車線の道路を迂回すれば問題ない。国道55号に出るにしても、住吉通付近を通っている道路か、立田付近を通る広域農道を利用すればよい。JR後免駅に送迎等で用事のある場合は、北口にアクセスするようにしたらいいだろう。その他、後免町そのものに用事がある場合も出来るだけ公共交通機関でアクセスしてもらうこと(そのための公共交通活性化だし)や、それ以外の場合も外延部に共同駐車場を設ければよい。街中の駐車場は最小限にすべきである。今、建物が壊されて駐車場になっている部分も、もう一度、住宅や店舗に戻すべきである。
とはいえ、単にトランジットモールにしたからといって自動的に再生するとは思えない。今の商店主だけでは到底活気のある街は生まれないだろう。それに加えて、郊外に個人でカフェを出店している人にこっちに来てもらうような制度的な仕組みや、ギャラリーなどの貸しスペースなども構えるなど、色々方法はあると思うが、様々な人のアイデアが求められるだろう。これこそワークショップなどの出番である。どんなお店に来てもらったらよいのか、どんな空間にしたらよいのかなど色んな方策があるだろう。
《朝倉(曙町~高知大学前付近)》
こちらも後免町と同様に併用軌道(しかも単線)で道幅も狭い。古くからの街区で、かつては活気のある商店街でもあった。北側には、片側2車線の国道バイパスが通っており、この旧道を自動車通行禁止にしてもさほど問題はないと思うのだが・・・・。むしろ、自動車で走るにはそもそも向いていないし、道が狭いだけにトランジットモールにするメリットは絶大であろう。
朝倉は、高知大学もある学生の街である。飲食店の需要も潜在的にある。後免町同様に、電線の地中化や修景も含めた総合的なまちづくりで再生される可能性は高い。高知大学の一部を帯屋町に移転などわけの分からない計画より、こっちの方がずっと意義のあうることだと思う。これこそ学生にも再生プロジェクトで大いに参加してもらったら良いだろう。
(朝倉電停前。ここも賑わいのある商店街として復活するか?)
《トランジットモール関連リンク集》
・ トランジットモール (Wikipedia)
・ トランジットモール (交通とまちづくりのレシピ集)
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コメント
都市政策が不在の高知市中心街の再開発問題。
都市計画が不在であることは間違いない。市民も行政も都市計画のなんたるかは十分に議論がされたけいせきはなく、熟成されていません。
やっしーさんの投石した波紋は小さくはないと思います。また今の段階では気がついている市民葉少ないでしょうし。
「高知はこんなもん」という「諦めムード」が一番いけないとは思いますね。
あきらめずに高知のあるべき姿を言い続けることです。構想を持っている人があきらめたら都市は終わりです。
あきらめないで、言い続けることです。
投稿: けんちゃん | 2007年11月20日 (火) 13時02分
>けんちゃんさん
世界中では、こんな事例がある、取組みがると知っているだけに、現状がもどかしく思うのもたしかです。特に、公共交通の運行体系の一元化がそうです。これを導入すれば間違いなく、今よりも収益性はよくなると思いますのに・・・。なかなか動かない現状が残念でなりません。
某BBSで話題になるだけでなく、マスメディアにもとりあがられたらもっと波紋は広がりますのにね・・・・。
まあ、言い続けます。マニアと言われようがなんだろうが。
投稿: やっしー@管理人 | 2007年11月20日 (火) 18時32分