高知から持続可能な交通を実現する(2) 「公共交通の再構築(鉄道路線を地域基幹交通に位置付けよ)」
高知から持続可能な交通を実現する(1)でも、述べたように、私のマニフェストは、「クルマ依存社会を克服し環境負荷が少なく住みやすい地域づくりを推進する」こと、すなわちクルマ依存社会への大いなる挑戦である。
その中でも、最重要項目が「公共交通の再構築」である。そういうことで、「公共交通の再構築」とは何かということを説明しよう。これだけでも、一度にすべて書くと長くなるので、数回に分けて書いていく。
分かりやすく言うと、公共交通に関するネガティブなイメージを根底から覆すこと。高知では、公共交通機関というと、運賃高い、本数が少ない、遅い、時間通りに来ない(バスに限定)、使い勝手が悪い、というふうにあまりいいイメージを持っていない。いったんマイカーを保有してしまうと飲酒時以外は縁がないということになる。私でさえ鉄道はともかくバスは使う気になれないくらい最悪の水準である。
(あまり上手くいかなったよさこいぐるりんバス 状況は厳しい)
下の表のように、公共交通の利用者は年々減少し、一方でマイカー保有台数は年々増加してきた。(最近は減少に転じたようであるが) また、この10年で道路整備が急速に進み都市構造も郊外化(スプロール化)が進展してきた。これも公共交通がニーズに合わなくなり利用者が減った原因の一つだ。
(表は、高知県企画部交通政策課HPより)
とはいっても、県民の多くはそんな状況でも「こんなもんか」と思っており、とくに大幅なサービス改善を望むような声も少ない。というよりこれだけ便利になりうるということに気づいてないだけではあるが。
私の提案は、小手先の改善ではなく、自動車利用の強力な代替となるべく公共交通システムを洗練されたものにする、誰もが当たり前に鉄道やバスを使う(逆に言うとマイカー利用を激減させる!)社会を地方都市圏で構築することを目指す。むしろ、日本で最もマイカーが走らない地方都市くらいになってほしいと思う。
もともと、高知県は山がちで平地が少ない。海岸線に沿った狭い平地に都市や集落が集中している。幸いその多くを鉄道路線が結んでいる。それも宿毛から奈半利まで。特にごめん・なはり線の後免町から安芸までは、安芸線が地域の発展に貢献した歴史もあり、主要駅(快速停車駅)を中心に市街地が形成されている。その都市構造は現在でもそれほど崩れていない。
このように公共交通の活用では先天的に有利な条件を有している。それら既存のストックを上手く活用し、バス、自転車とも連携を密にすれば、見違えるくらい優秀な交通システムになり得る。首都圏や関西圏とも遜色のないレベルになると言っても決して過言ではない。
ハード面では、最大の提案は「土佐電鉄線とごめん・なはり線およびJR土讃線との直通運転を実施すること」である。これこそ私がかねがね考えてきたことだ。
現在でも、ごめん・なはり線はJR線に乗り入れて高知まで直通しているが、単線で線路容量に限界があり本数に限りがあること、繁華街まではさらに乗り換えしなければならないこと、そのためどうしても時間がかかるなど不便な点は多い。一方で、土佐電鉄は繁華街に直通し、後免町からずっと複線電化である。複線電化鉄道こそが立派な都市鉄道であるのでこれを活用しない手はない。
「そんなこと本当にできるのか?」と、思われるかもしれないが、できるのである。路面電車と一般の鉄道は、別物と思っている人が多いだろうが、どちらも鉄のレールの上を鉄の車輪で走る乗り物であり、基本的な構造はほとんど変わらない。乗降用のホームが低いか高いか、車両規格の違いくらいである。レールの幅さえ同じであれば物理的には走行できる。
特に、高知の場合はいくつも有利な条件が存在する。
[1]土電、JR線、くろ鉄共にレールの幅は同じ1067mmを採用していること、
[2]後免町、朝倉で線路が隣接していること、
[3]さらにその土電の終点からさらに伸びるようなごめん・なはり線と土讃線の路線形態、
[4]安芸線時代の直通運転の実績、
などいくつも好条件に恵まれている。
海外に目を向けると、ドイツのカールスルーエが有名だ。トラム(といっても直通用車両は大柄だし編成も長い)が、ドイツ鉄道の大幹線(超特急ICEや国際列車も走る)に乗り入れて、広大なネットワークを構築し大幅に利便性を向上したのはその道では有名な話だ。それに比べれば、特急列車も貨物列車も走らないごめん・なはり線への直通などずっとシステム的にはハードルは低い。
そして、別に海外でなくても日本にこそ事例は豊富に存在する。一つは広島電鉄の市内線と宮島線の直通運転である。路面電車の車両がそのまま郊外の専用軌道を走っている。ただ、事業者は同じでありシステムを完全に一体化してしまったので実質は同じ路線である。
大いに参考になるのが、東京や大阪や福岡などで実施されている「地下鉄と郊外私鉄路線(一部はJR線)との相互直通運転」。これらも昔は、東京の場合、山手線内に入るには、そこから都電に乗り換えていたものが、地下鉄路線に衣替えしたときに郊外私鉄と直通運転を開始した。このおかげで東京は、鉄道網をはじめとした公共交通機関が有用に機能する都市となったと言っても過言ではない。世界的にも評価されている。私が提案しようとすることは、まさにそれだ。違いは、都心部に直通するという機能を地下鉄でなく路面電車で行うということである。都心部を路面電車で運行することは、繁華街では短い駅間隔、乗り降りしやすい、設備などのコストが安い、高知のような地方都市では最適な輸送力と、いいことづくめだ。
または、かつての高知にもいい事例が存在した。阿佐線に夢を託して昭和49年に廃止になった土電安芸線である。昭和29年から廃線になるまで、市内の路面電車が後免町から安芸までそのまま直通していた。その生まれ変わりであるごめん・なはり線に乗り入れて、安芸まで、さらに奈半利まで走ることは大いに意義があると思う。「土電電車ふたたび安芸へ!」と、言ったらご年配の方にはもっとも理解しやすいかもしれない。
(かつての安芸線直通の600形2両編成 長崎さん提供)
ただ、線路さえつなげばそれで済むほど簡単ではない。ごめん・なはり線側は、非電化のなで電化が必要であり、ホームも2種類用意しなければならないし、増発に備えて交換・退避可能な駅も一部追加(特に立田)しなければならない。土電側も知寄町以東で高速化しないと時間がかかりすぎる。車両も直通専用のものを新造することも必要だ。
けれども、鉄道が高知県域の基幹交通として機能するには、それらのハードルをクリアしてなんぼだと思う。そもそも新たに路線を引くわけではないのだから。いったん基幹交通のレベルが上がれば、枝線にあたるバス路線などもネットワーク化がしやすくなる。
まさに、直通運転は、土電、なはり線、土讃線ともども高知都市圏の骨格軸を形成する基幹交通システムとしての明確な位置付けを与える提案だ。それらを総体でLRT(ライトレールトランジット)と呼べうるものに形成していくことこそが「公共交通の再構築」である。
高知で100年以上走ってきた土電の路面電車、今、環境や都市のためにも大いに躍進する時がきたと思う。懐かしい路面電車の情緒も残しつつ、LRTに脱皮してもらいたい。ごめん・なはり線も長年の悲願の上に開通した、日本最後の鉄道公団AB線(地方路線)。ただのローカル線ではモッタイナイ!最大限活用される都市交通システムに進化してもらいたいと切に願う。
この直通運転構想は、具体化すれば「日本で初めて路面電車とJR線との相互直通を検討」ということになるので話題性も十分だ。こんなに長く書いたが、直通運転の提案だけで占められてしまった。ハードの改良案も他にも色々あるので、これから書いていく。
| 固定リンク
「高知から持続可能な交通を実現する」カテゴリの記事
- 新ブログ(2009.11.17)
- 高知からクルマ依存社会を問い直す(85) 「ICカード導入のチャンスを最大限活かせ」(2008.12.23)
- 高知から持続可能な交通を実現する(64) 「街路整備で貧相になった高知市目抜き通り」(2008.08.03)
- 高知から持続可能な交通を実現する(78) 「公共交通でめぐる観光スタイルの確立」(2008.10.12)
- 高知から持続可能な交通を実現する(65) 「醜態さらす高知市街」(2008.08.14)



コメント
相互乗り入れは首都圏では早くから見られましたね。
土電では郊外電車の走るごめんから東に低床の市内電車が直通していました。
投稿: 下司孝之 | 2007年10月23日 (火) 09時35分
>下司さん
ごめん・なはり線と土佐電鉄の直通運転とはまさにその2つの事例を、現代の地方都市に合致するように応用して導入しようというものです。本質的には全く同じです。
投稿: やっしー@管理人 | 2007年10月23日 (火) 12時22分
私は以前四国遍路で室戸まわりの道を通り、四国を一周しました。
私としては、
ごめんなはり線と阿佐海岸鉄道がつながればいいなと思いました。そして、室戸周りの優等列車が徳島まで結ぶ。そういう公共交通のネットワークがあれば「四国が一体的に」発展しそうな気がしたからです。また、そういう風につながればローカル線も末端の枝が枯れるようにして廃止される危険性も低くなるのではと感じます。同様の考えで宿毛から宇和島もつながってほしい。もし、そうなったとしたら駅の周辺に「コンパクトな街」が出来上がり、車がなくても生活できそうだなと思いました。富山のライトレール事業にもそういう発想があるようですね。
JR四国の線路には単線や途切れたところ、遠回り(愛媛の高縄半島など)が多いですね。それだと鉄道による「四国の一体化」とか、「連携」というようなことが不利ではないかと感じました。鉄道の再整備によって四国が「住み易い」土地になればと思います。具体的な数字等は分からないのですが、鉄道の整備の方が高速道路を造るよりも安いですよね。あれだけでかい構造物に対して線路設備は細い。それをみればそう思わずにはいられません。
この記事は説得力があってうらやましいです。私もそういう風に話せるようになりたいものです。
やっしーさんは、この記事について都市鉄道的なイメージで考えられたのではと感じました。私は都市間を結ぶ鉄道を想定しました。
投稿: 歩いてみて | 2009年6月22日 (月) 20時30分