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自転車が歩道に上がった日 自転車の歩道通行解禁問題(2)

11月30日に発表された、警察庁の「自転車の歩道走行を正式に認可」するという提言が、実は、自転車を車道から締め出すことを狙ったものであるということで、色々とかなり大騒ぎになっている。もう、あまりにも馬鹿げた改正案なので。

法案提出は、2月。阻止するのは、ほとんど絶望的。しかし、「あ、そうですか」と、だまっているわけにはいかないので、関係者はアクションを起こし始めているところだ。

今回は、過去の道路交通法改正による自転車の歩道走行を限定的・暫定的(現実にはそっちがスタンダードになってしまったようだが、当時はあくまでもそうだったのでそう書いておく)に認めたのが、果たして交通事故の減少に貢献したかを中心に書いていく。

自転車は、歩行者の仲間か?それとも車両の仲間?それで、本来どこを走るべきか?

これについては、勘違いしている人も結構いると思うので、最初に簡単に説明しよう。お堅い話ではあるが、避けて通れないので。

自転車は、道路交通法では、軽車両というれっきとした車両だ。(第2条の第8項及び第11項参照) そして、第17条第1項では、歩道と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない、また、第4項では、道路の左端を通行しなければならない、となっている。

ただ、例外措置として、第63条第4項で、「普通自転車は、第17条第1項の規定にかかわらず、道路標識等により通行することができるとされている歩道を通行することができる」と定められている。
その場合は、歩道の中央部分から車道寄りの部分を徐行の上、歩行者の通行を妨げるときは、一時停止しなければならない、とある。
現行法では、あくまでも歩行者最優先である。

よって、

    自転車は、車両の仲間であり、車道を走るのが原則である。

決して、自転車は歩行者ではない。歩道は、むしろ例外で間借りして走らせてもらっているにすぎなく、本当は、歩行者に遠慮しながら走らねばならない。歩道上如何にかかわらず、歩行者に向けてベルを鳴らし、蹴散らすのは言語道断だ。

自転車が、当たり前に歩道を走っているのは、実は先進諸国では日本だけだ。それは、欧米諸国の人々から見れば、野蛮で不思議な光景に見えるらしい。

いったい、いつから自転車が歩道を走るものになっていったのか?

1.初めて、自転車が歩道通行可となったのは、昭和45年(1970年)

道路交通法第17条第3項において、「二輪の自転車は、第17条第1項の規定にかかわらず、道路標識等により通行ができるとされている歩道を通行することができる」と規定された。

ただ、この改正では、自転車が歩道を走ることができるのは、本当にごくごく例外中の例外で、「歩道が非常に広くかつ歩行者の通行量も少なく、支障がない場合」に限られていた。

また、この年には、道路構造令も改正された。従前は、自転車通行の用に供する「緩速車道」の規定が置かれていたにすぎなかったが、この改正で自転車交通を自動車交通から分離する観点が取り入れられた。

この改正では「自転車は車道を走るのが原則」というのは、名実ともに覆らなかったようだ。通行可の歩道もごくごく例外中の例外でほとんど存在しなかったのであろう。

そして、現在に至るまでに、

2.「自転車は歩道を走るもの」というものにしてしまった、悪名高い昭和53年(1978年)の改正

同年4月と5月にかけて、両院の本会議で全会一致で可決、同年12月に施行された。

あの、第63条第4項が定められた現在までずっと自転車の位置づけを歪められてきた、運命の時である。

この改正では、普通自転車の定義、歩道上での通行方法、交差点での通行方法、横断方法などが細かく規定された。それは、自転車の歩道走行をより推進する方向に向いた。

改正のきっかけは、激増する交通事故が背景にあった。自動車と自転車との事故も深刻なものとなっていた。本当に、苦渋の決断であって仕方なく歩道に上げたという感が強い。当時は、自転車を歩道に上げざるを得ないことのマズさを認識していたようだ。

「これは自転車が増えてしまったので、あくまでも緊急避難対策です。落ち着いたら本建築に入らなければならない。」

「歩道に自転車を上げるというのは、歩行者へのしわ寄せによって、問題を解決するという考え方だ。いつまでも続けていいやり方では、絶対にあるまい。」

「歩道の上に自転車を上げなきゃならないというのは道路のまさに日本的な欠陥です。」

当時は、警察庁も至極まっとうな考え方をしていたようで、これからも「本当はマズいんだけど・・・・」という姿勢がうかがえる。

で、その後、現在までに至るまで、この当時より全くといっていいほど進展していないのは、現状の通りだ。暫定措置であったはずの自転車の歩道通行を30年近くも放置しており、既存道路の改良をしないばかりか、その後に新設された道路すら自転車の歩道走行を前提としているというのが現実。これは、また近く別の機会に詳しく述べる。これこそが、私の最大の問題意識なんで。

さて、この改正で、自転車を歩道に上げたのは果たして成功だったのだろうか?その一端は、これから示す2つのデータが物語っている。

下の表は、自転車乗車中の交通事故死者数と、交通事故全体の死者数の中での構成率の推移である。

Photo_1

下のグラフは、上の表をグラフ化したもの。

Photo_2

確かに、法改正施行前後の昭和53年と54年を比べると、死者数は1113人から1005人へ1割ほど減少、その構成率も12.7%から11.9%へと若干減少した

施行直後は、一応は効果があったらしく、これが警察庁の自転車を歩道に上げることの自信につながったようだ。しかし、これはごく短期間の効果しかなく、構成率は、この27年というもの、10~12%で推移しておりほとんど変化していない。

この時点で、すでに自転車を歩道に上げて成功だったとは到底言えない。

次に、自転車対歩行者の事故件数について見ていこう。

Photo_3

グラフにすると、下のようになる。

Photo_4

なぜか、’99年から’00年にかけて激増している。801件から1827件と2倍以上の増加。それは、統計の方法が変わったと考えるのが自然だろうが、いずれにせよ年々増加している。もともと、1500件クラスの事故件数があっただろう。

「この10年で、いったい何が起こったか?」と、思わざるを得ないくらいの激増ぶりで、どちらも(統計手法が変わった可能性があるとはいえ)約5倍に膨れ上がっている。本当に何が起こったんだ?

クルマに巻き込まれて死亡(負傷ではないことに注意)する事故は減っているが、他方で、歩行者に危害を加える事故が増えている。

これから考えても、自転車を歩道に上げて事故を減らすというのが、いかに論理矛盾しているのかお分かりだろう。むしろ、さらに事態は深刻化するだろう。

要するに、警察庁は、

歩道上で歩行者との事故が増えているにも関わらず、自転車を歩道に上げることによって事故を減らそうとしているわけである。

どう考えても、納得できない。もし、明確な根拠があるならしっかりと説明してほしい。少なくとも、こうすることによって、歩行者との事故以上に自動車との事故が減るという根拠でもあれば、それを納得できる形で示してほしい。

こんな意味不明な改正案を絶対に通してはならない!!

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コメント

いろいろ巡回して偶然拝見いたしました。
つくば市在住とのこと、いわゆる学園都市中心部で自転車道が整備されたあたりにお住まいでしょうか。

昔からですが、自転車は野放しにされてきました。実際、乗るために教育を受けるルールもないですし、交通取締を受けて金銭などの制裁があることもまれです。
夜間無灯火は以前からありますが、最近のヘッドホンステレオ(耳栓状態)、メール打ちなどは目に余るものがあります。

その上、クルマの大型化で車道を走る自転車を追い越すことが難しくなってきました。

以前ならヘッドホンステレオも少なくメール打ちもないので、こちらの動きに気を払って通過時にはお互い意識をしていることが多かったようですが、最近では全く意識せず、自転車側が突然横切ったり、ふら付いたり、止まるべきところで止まらなかったりということがよく見られます。

たとえば学園都市の中心部。自転車で車道を走ると、側溝のフタの段差と轍があり、端から1m以上内側を走行することになりませんでしょうか。端から1mのところを走られたら、幅の広い路線バスなどは大きくよけないとなりません。特に、ヘッドホンステレオが見えた場合は自転車のふら付きを含めて大きな回避が必要です。円滑な交通にはやはり自転車に協力してもらう必要はないでしょうか。

こうなった以上は、回避策としてはある程度歩道に上がってもらうしかないと考えています。

いかがでしょうか。

誤解のないように言っておきます。ただ、歩道に上がれと言ってるわけではありません。

クルマ側に相応のマナー低下が見られますが、自転車側のマナー低下も著しく感じる。これを回避するために自転車にも相応の規制やペナルティをもうけて欲しい。それが私の考えです。事故を防ぐ制度や事故が起こった場合の責任があいまいな自転車が今のままなら、歩行者と同じ歩道に上がるのもやむなしという思いです。

一方、自転車が歩道を走るには、自転車対歩行者の事故が合った場合の罰則運用、補償ルールなどの確立をしてもらわないとなりません。むしろこれが先でしょうね。これは自転車対クルマの事故も同じです。このへんについてもぜひ、ご意見を拝見したいところです。

>牛たろうさん
なるほど!
自転車と歩行者の事故増加のなぞが半分は解けました。真犯人は、携帯電話とヘッドホンステレオにありそうです。
この背景には、やはり自転車の車両感覚の欠如も大きいでしょうね。あまりのも気軽にのれるので一定の緊張感すらなくなったことは否めません。歩道に上げてしまったことが大きいんでしょうかね。
この件は、また別途記事としてアップします。

よくできたページで勉強になりました。リンクをはらせていただきましたが、ご迷惑でしたらお知らせください。

>瀬尾さん

リンクOKですよ。どうもありがとうございます。

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